不毛な引き継ぎ その2


 「作業終わりました」

 「……じゃあ、つぎこれをお願いします」

 「はい」


……15分ほどして、


 「終わりました」

 「……じゃあ、つぎはこれをお願いします」


と次々に作業を進めながら、「そういえば色調ってどのタイミングでやるんだろう? ていうか、ちゃんとできているか作業後のチェックとかしなくていいのか?」などと思いつつ、ひたすら機械的に変換をしてepsで再保存しまくっていたのであります。

そして振られた作業が終了し、「じゃあ、ちょっと待機していてください」といわれ、


 「んー、やっぱ色調とか切り抜きとかふだんし慣れない画像修正とかすると肩がこりますのう」


なんて思いながら、Photoshopのヘルプをぼけーっとながめていたのです。

すると、かなりしばらくしてから、


 「totsugekiさん!!」

 「はい?」

 「さっき変換してもらった画像がずいぶん暗いんですけど……」

 「え?」

 「もしかして色調とかってしてくれました?」

 「いいえ」

 「……」

 「もしかして色調ってこの段階でするんですか?」

 「そうです」

 「……そうですか、それはすいませんでした。じゃあこれから色調します」

 「……」


んまあ、本当であれば「いくら仕事ができる人であったとしても最初は指示されないとわからないと思いますよ」といってやろうかとも思ったのですが、こちらのクライアントは派遣社員を使うのもはじめてということだし(それが事実かどうかは私にはわかりませんが)、ちゃんと確認をしなかった自分も悪いので一応あやまりはしましたが、私自身は「ちゃんと指示しないんだから求めているものと違って当然じゃん」と別に悪いともなんとも思っていませんでした。

ですが、そのあとすぐに「この人、大丈夫なの?」といった懐疑的な目でみられるようになったのはみなさまの想像に難くありません。


 「ちぇっ、なんかやりづらいうえにおまけに不毛だよ」


なもんで、業務の引き継ぎをしてほしいなどとはいわれていますが、すでに辞める気まんまんで派遣初日を終えたのでありました。