3月で契約が切れる


のにともない、会社側と社員雇用の交渉が始まりました。

といっても、ことあるごとに出版局長や編集長が「ぜひ社員になってほしい」というわりに、そういう話がいっこうに出ないので、おかしなあといぶかしんでいたのであります。

で、派遣会社の担当営業に「社員雇用の件なんですけど……」と打診をされたのを機に聞いてみたところ、紹介予定の派遣社員は社員になる際の条件や待遇などを会社と直接交渉してはいけないそうです。


 「あ、やっぱりそうなんですか」

 「ええ、そうなんですよ」

 「上役の人たちからなんにもいわれないからおかしいなと思ってたんですよね」

 「ああ、そうですか。こちらは紹介予定派遣でお二人社員になられてますからね」

 「なるほど」

 「で、条件なんですけど……」

 「ええ」

 「どのくらいにします?」

 「どのくらいっていわれても困るんですけど、とりあえずいまもらっている額と同じくらいもらえればいいんですけど」

 「……そうですよね。でも、totsugekiさんは残業も多いから月に30はいってますよね?」

 「まあ、手取りだとそのくらいですね」

 「ちなみにこちらは最初は契約社員での契約っていうのはご存じですか?」

 「ええ、そういう話はちらっと聞きました」

 「そうすると給料は年俸制になるんですよ」

 「あ、そうなんですか」

 「で、年俸だと税金なんかも込みになるので手取りで30万ってことは……(カバンからでかい電卓を取り出し、がたがたとキーを叩いて)年俸だとだいたい430万ですね」

 「お、いい金額じゃないですか」

 「くーっ、俺もこんなにもらいてー」

 「けっこう、いい金額になりますね」

 「そうですね、正直なところこの金額を提示するのは厳しいです」

 「まあ、そうでしょうねえ」

 「もうちょっと下げません?」


つづく