3月で契約が切れる(続き)
のにともない、まずは派遣会社の担当営業と条件面での打ち合わせであります。
「もうちょっと下げません?」
「……たしかにこの金額では厳しいでしょうねえ」
「いままでのこちらの紹介予定の実績からいうともっと下げないと難しいですね……」
「んー、そうですねえ、別に自分一人で生活していくぶんには低くてもかまわないんですけど、実は今度結婚することになりまして……」
「え、そうなんですか!?」
「いまは彼女も働いてますけど、子どもがほしいっていっているので、結婚して出産となるとなにかと物入りになるじゃないですか」
「ええ、そうですね」
「そのときになって給料が低くてお金がありませんというのでは安心して仕事していられないし、モチベーションも下がると思うんですよ」
「ええ」
「だから、社員になるのであればちょっと高めでもそれくらい出してもらって、もし彼女が出産することになって仕事を辞めても、ボクが安心して仕事を続けられるようにしてもらうのが会社の努めだと思うんですよね」
「すばらしい、totsugekiさんのおっしゃるとおり!!」
「そんなにすばらしいことはいってないと思いますけど……」
「いや、実は自分も近々結婚することになってまして」
「あ、そうなんですか? それはおめでとうございます」
「現状だとあまりにも給料が安すぎて結婚式の資金もためられないので、給料をあげてくれって会社と交渉している最中なんですけど、なかなかあげてくれないんですよ」
「まあ、このご時世ですから難しいでしょうねえ」
「でも、totsugekiさんのいっていることを聞いて勇気が出ました。これから会社に帰ってさっそく使わせていただきます」
「いや、そんなにすごいことはいってないと思いますけど……」
「それで式はあげる予定ですか?」
「ええ、いま式場を探している最中ですね」
「あ、そうなんですか。実は自分たちは来年式をあげる予定なんですけど、先方が80人くらい呼びたいっていうんで……」
「はあ」
なんて、その後ひとしきり結婚の苦労話(?)をして担当営業と別れたのでありますが、
「あれ? そういえば条件ってどうなったんだっけ?」
どうも先行き不安であります。