彼女の実家にドキドキお泊まり
「……もう電車ないから、うちに来る?」
「え? いや、まだ電車ならありますけど……」
「……来るのイヤなの?」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
「じゃあ、行く?」
「……えーっと、本気ですか?」
「うん」
「えーと、行くのはまったくかまわないんですけど、ボクにはお泊まりできない事情が……」
「え? なにそれ?」
「いや、えーっとなんというか、にゃーがにゃーなので……」
「ほら、もう電車来ちゃうよ」
「……うーん、わかりました。じゃあ行きましょう」
「ホント」
「ええ」
「お泊まりできないのは大丈夫?」
「うん、まあちょっと我慢してもらえば大丈夫でしょう」
「なにかあったっけ?」
「いや、まあ、たまには平気ですよ」
「そう」
てなわけで彼女のご自宅へ向かうことになったわけですが、実をいうと彼女のご両親には彼女と私がおつき合いするのを賛成されていないというか、「定職にも就いていないような、どこの馬の骨ともわからない男とつきあうなんて!」とあからさまに反対をされているのです。
にもかかわらず、別に電車もなくなったわけでも、わざわざ行かなくてはいけない理由もまったくないのにご実家へおじゃまする羽目になってしまい、
「おいらはなんでこんなことをしているのだろう?」
と思っているうちに彼女の自宅へ着いてしまい、
「しーっ」なんていいながら二人で物音をたてないようにこっそりと家に入り、彼女の部屋へと到着。
「別にそんなに悪いことしていないのに、なんだかものすごく悪いことをしているような気がするのは気のせい?」
などと思いつつ、ご両親に気づかれないように声をひそめてひそひそ話をしながらビールを飲み、「じゃあ、明日もあるから早めに寝ましょう」と夜中の3時ごろに眠りについたのでありますが、かなり酔っていてそのうえひどく疲れているはずなのにもかかわらず、まったく寝つけません。
なもんで、彼女がぐっすりと眠りこけている隣で一晩中まんじりともしないまま朝を迎え、携帯電話の目覚ましで飛び起きた彼女に最寄りのバス停まで案内してもらって、始発で帰途へとついたのでありました。
そしてなんとか自宅にたどり着き、「久しぶりに朝帰りしたから、絶対に怒ってるだろうなあ……」と思いながら、おそるおそる玄関を開けると、二匹ともベッドに入って「あ、あいつ、やっと帰ってきたよ」といった感じでじーっとこちらをみています。
「あれ? お腹減ってないのかな?」
と不審に思いながら部屋の中に入ると、私がパジャマがわりに着ていたスウェットが八つ裂きにされていて、おまけに部屋の中の物があたりに散乱しています。
状況から察するに「腹減ったぞー」と一晩中大暴れをしていたらしいのですが、あんまりにもはしゃぎすぎて疲れてしまったのでちょうど一休みをしていたご様子。
なので、「はい、すいません」と声をかけながら、にゃつらにごはんをあげている間に布団を敷き、午後からテニスがあるのですばやく眠りについたのでありました。