本日はテニス日和(その2)


 「……ちなみにK谷さんのお住まいってどちらでしたっけ?」

 「えっと、池上ですけど……」

 「そうでしたよね。じゃあ、“今日は自転車で池上からわざわざ時間をかけてここまできたのにスクールが休みで時間があいちゃった”っていうのを全面に押し出していく作戦でいきましょう」

 「はい、わかりました」


なんて打ち合わせをしながらクラブハウスへと乗り込んだのですが、コートを取ってくれている世話役の方に「きゅうきょ1人参加させてほしんですけど……」とK谷さんを紹介すると、「どうぞ、どうぞ」とあっさりOK。

まあ、むげに断られることはないというのはわかっていましたが、やはりいろいろと気を遣うのであります。

ですがとにもかくにも、ぶじにK谷さんを加え、S木さんも合流して12時から16時までいつものようにダブルスをこなしたのであります。

で、今度は16時から18時まで2人きりでのシングルなのですが、がんばってこのシングルをこなしたとしても次の18時30分から20時30分のダブルスは等々力への自転車での移動もあるのでさすがにきつい。

なもんで、


 「K谷さん」

 「はい、なんでしょう」

 「このテニスって16時までじゃないですか」

 「はい」

 「実はこのあと2時間コート取ってて、M保さんとシングルスやる予定なんですよ」

 「ほほう」

 「もしよかったらK谷さんも参加していただけません?」

 「………やりましょう」


てなわけで、2人きりのはずが三つどもえのシングルス対決になったのですが、やはりシングルスの大会にも出場しているM保さんが一枚上手で、どんなボールも拾いまくるうえに配球をバックに集めて有利に試合を進めるわけです。

ですが、トップスピナーのK谷さんも強力なサーブとストロークで相手を押し込んで甘くなった球をコーナーに決めるというすばらしい攻めで応戦。

そしてその2人に翻弄され、1ゲームも取れずに試合が終了してしまいへこむ私という形で時間は過ぎていったのです。

つうか、なにやら一人蚊帳の外に取り残されてしまったような感覚を覚えつつ、


 「おいらって本当にシングルむいてないんだな……」


と思ったりもしたわけですが、シングルスにむいていないというより、ダブルスに慣れてしまい、ストロークが弱くなっているのでポイントが取れないのです。


 「ストロークを強化しないとダメだな」


と強く心に思いつつ、K谷さんと別れ、M保さんと等々力へとなだれこむのでありました。