[会社]新たな闘いのはじまり(やっと交渉っぽくなってきた)


今回も前回のエントリー「[会社]新たな闘いのはじまり(プロローグ)」の続き。

さてさて、どうやってあのアホなおっさん(社長)に仕返しをしてやろうかといろいろと考えてはみたものの、いかんせんリサーチをするにも仕返しを実行に移すのにも時間が足りない。

う〜む、どうしたものかと考えること15分……。


 ま、いいか。アホの相手しても時間のムダだし


という結論を出し、そんなことがあったことすら記憶から消去しようと思っていたら、急に常務が「totsugeki君、ちょっといいか?」と声をかけてきた。


 むむ? totsugeki君? いままで呼び捨てだったのにいきなり君づけ……?


と妙な雰囲気を感じつつ、常務とドブチョーと私の3人でエレベータに乗り込むといつもはみんな終始無言なのに、常務が急に「月刊誌の進行はどうだ?」と聞いてきた。


 むむむ? これは絶対におかしい。なにかあるぞ


と鬼太郎よろしく、私のアンテナがピピピと反応していたのだが、なにも気がつかなかったかのように「いやあ、いま下版前なんでちょっといまはバタバタしてます」と答えておく。

で、3人で社長室に入るとすでに総務部長が待っており、常務に促されて席に着く。すると常務がおもむろに


 常務「今日、ここに来てもらったのはほかでもないのだけれども……」

 「はあ」

 常務「totsugeki君は次の会社は決まっているのかな?」

 「……いえ、特には。それがなにか?」

 常務「そうか、それだったら実は期間をちょっと延長してもらいたいんだよ」

 「は? なんのですか?」

 常務「いや、いま(10月)21日まで会社に来るのを延長してもらっているじゃないか」

 「はあ」

 常務「それをもう少し延長してもらいたいんだよ」

 「ああ、そういうお話ですか」

 常務「どうだ?」

 「というか、いまこの時点でそういうお話をされるっていうのはちょっと遅くないですか?」

 常務「む……」

 「ボクはてっきり自分が会社を辞めるっていった時点でそういうことをいわれるものだと思ってましたけど」

 常務「……いや実はそれには理由があって、本当は新入社員を2人入れる予定だったのだけれども1人辞退されちゃったんだよ」

 「ええ」

 常務「だから、当初の予定とは状況が変わってきたものだから、きゅうきょ君に話を……」

 「ということは、ボクはその人の代わりってことですか?」

 常務「いや、そういうわけじゃないんだけども……」

 「いまそういう話をされるってことはそういうことですよね?」

 常務「いや、決して君のことをほっぽらかしていたわけじゃないんだよ。それに今度新しく入った彼女もちょっと頼りないから、しっかりと引き継ぎをしてもらいたいし……」

 「……引き継ぎならちゃんとやってますけどね。それに頼りないっていっても、ボクはみんなあんなもんだと思いますけど」

 常務「それにこれから年末に向けて忙しくなるじゃないか。いま新しく募集はかけているのだけれども、もし新しい人が入ってもすぐに仕事ができるようになるわけじゃないしな」

 「まあそれはそうですけど。で、期間を延長するっていうのはいつまでなんですか?」

 常務「こちらの希望としては12月末まで」

 「それっていうのは……」

 常務「正確には月刊誌が下版するまでだな」

 「ああ、そうですか」

 常務「どうだ? 君の次の仕事が決まっているのなら無理にとはいわないが、もし決まっていないのだったら引き続き来てくれないか?」

 「……そうですか。そうですね。でも、もうボクも一回(集中力が)きれちゃってますからね。また前と同じように仕事をするのは難しいと思いますよ」

 常務「ああ、それはもし君が期間を延長してくれるのであれば、その間フレックスにしてもらって構わないぞ」

 「へ?」

 常務「ただし、下版前の1週間とか2週間とか期限を決めてということだが」

 「はあ」

 常務「だから、たとえば14時に会社に来たのならそこから8時間いて帰るのは22時で、もし12時に会社に来たのなら帰るのは20時という感じで、とにかくそれは君の自由にしてもらっていいから、そのへんの詳しいことはあとで部長と相談してくれ」

 「ああ、そうですか。それはずいぶんと好待遇ですねえ」

 常務「とにかく君には月刊誌の引き継ぎをしっかりやってもらって、空いた時間に年末の仕事(かなり大きい仕事なのだ)を手伝ってもらいたいんだよ」

 「そうですか。それまたずいぶんと忙しいですね」

 常務「だから君に来てもらいたいんだよ」

 「……そうですか……。別にボクはこの話をお受けするのはやぶさかではないのですけれども……」

 常務「おお、そうか!」

 「問題は待遇ですよね。その間のボクの待遇っていうのはどうなるんですか?」

 常務「う〜んと、そのへんはどうなんだ?」

 総務部長「……えっと、もしその場合にはたぶんアルバイトとかって形になると思いますけど……」

 「へ?」

 総務部長「ですから、もし期間を延長するということであればそれまではパートみたいな形になると思います」

 「ということは、時給計算ってことですか?」

 総務部長「……たぶん、そうなると思います」

 「そうなるとボクの時給はいくらくらいになるんですか?」

 総務部長「えっと、その場合にはtotsugeki君がもらっている給料を日割りで計算して、それをさらに8時間で割った数字になると思います」

 「保険とかはどうなるんですか?」

 総務部長「えっと、その場合にはtotsugeki君がアルバイトになった時点で保険はなくなります」

 「じゃあ、社員からアルバイトになった場合の条件っていうのはどうなるんですか?」

 総務部長「それはいままで社員からアルバイトになったっていう事例がないからなんともいえないけれども、あとで調べて……」

 「というか、待遇が社員からアルバイトになるっていうのはどう考えてもボクにメリットがないと思うんですけど」

 常務「ん? なんでだ?」

 「だってそうじゃないですか。もしボクが社員の待遇のまま12月末までいたらボーナスが支給されるわけですよね?」

 常務「……うん、まあ支給されればな」

 「でも、もしボクの待遇がアルバイトになっちゃったらボーナスは支給されないわけですよね?」

 常務「まあ、そうだな」

 「そうしたらボクがこの会社に残るメリットがないじゃないですか」

 常務「……」

 「だったら、すぐにほかのところに行ったほうがマシですよ」

 常務「……そうか。それもそうだな。じゃあ、私と総務部長とで社長のところに行って君の待遇をどうするか確認してくる」

 「ええ、そうしてください。そうじゃないとボクがこの話をお受けするのを決めてから、やっぱり待遇はアルバイトだったみたいな話はイヤですからね」

 常務「社長はこれからいらっしゃるのかな?」

 総務部長「はい、このあとすぐにみえると思います」

 常務「よし、わかった。じゃあ、これからすぐに社長と君の待遇をどうするか相談をしてくるからこの件は考えておいてくれ」

 「そうですね。では、こちらも前向きに検討しておきます」


ったく、先を読む力がないというか、見る目がないというか、こんな話は私が会社を辞めるっていったときにウソでもいいから「申し訳ないのだけれども12月までいてくれないか?」と最初にいっておけば、私もこんなにヘソを曲げなかったし、こんな交換条件を出されずにもっとスムーズに交渉も進んだろうにねえ。

ま、新入社員が辞退してしまったっていうのは予測はできないとは思うけれども、そもそも募集をかけるのが圧倒的に遅いわけだし、それこそ危機管理がなっていればそんなことであたふたする必要もないのにさ。いずれにしても、そのちょっとのイメージができないだけで、下げなくてもいい頭を下げるはめになるのですなあ。

かくいう私もそのちょっとのイメージができない人たちのおかげで、12月までの食い扶持とすでにあきらめていたボーナスがゲットできそうな気配なのだけれども。

というのも、ちょっとはそういう可能性があるんじゃないかなとは思っていたのである。

もともと私が会社を辞める際に理想としていたのは「ボーナスをもらってハイさようなら」だったのだが、退職願もまともに書けない人間にそんな高等技術が使えるわけもなく、仕方がないのでボーナスが支給された7月から会社を辞める準備を始めたのだが、もさもさしているうちに8月、9月、10月とずるずると引き延ばされ(いや、100%自分のせいなんですけど)、こうなったらどうにかして12月まで期間を伸ばしてボーナスをもらえないかなとは思ってはいたのである。

ただ、アホな人たちが相手だと交渉にすらならないのですっかりあきらめてはいたのだが、新入社員が辞退してくれたおかげで細い線がつながったというわけだ。

しかし、これをお読みの諸兄のなかには「こんな会社とっとと辞めちまったほうがお前のためだぞ!」とお思いの方もいらっしゃると思うが、私もそのとおりだと思う。

だが、私がいままで不毛な闘いをしてきたのは、すべて会社側に「君は会社に必要な人間だ」といわせるためであり、それを会社側から(たとえウソでもいいから)いわせるためだったのである。

だから、常務から「君に来てもらいたいんだよ」という言葉を聞けただけで私は胸のつかえが取れ、その場で「お言葉はありがたいのですが……」といって話を辞退しようと思ったのだが、そのときにふと社長のことを思い出したのである。


 あ、もしかして社長って私みたいな失礼なやつが会社に引き留められたのを知ったらものすごい喜んじゃうかも!?


で、社員の待遇で期間が延長されたら、残りの2ヵ月間で社長に仕返しをしつつ、ついでの駄賃としてボーナスもむしり取ってやりますかってなもんで、私の読みどおりにいったらこりゃ笑いが止まりませんのう。わはは。

でも、社長がなんていうかわからないけれども、私はどちらに転んでも失うものはなにもないし、あのおっさんがどういう反応をするか楽しみである。

そしてこの話はまだ続くのだが、ムダに引っ張りつつ、明日のエントリーへと続く。