[会社]会社の愚痴は有用か?


なぜかはわからないが,昔からよく愚痴を聞かされるのである.

その昔は仕事場のおじさんに酒を飲みながら毎晩のように聞かされ(それが仕事みたいなものだったのだが),社会人になって5年も経つと知り合いの中間管理職のおっさんや経営者のおっさんに酒を飲んでは聞かされ(思わず愚痴ってしまうのもわからないでもないが),最近では友人や会社の隣人,さらには父上や愚妹,愚弟にも会社の愚痴を聞かされる.

私と立場が同じ(役職のない)人間(20〜30代)であれば,最初は「会社でこういうことがあったんだけど,totsugeki君ならどうする?」とか「この間こんなことがあってさあ〜」といった感じなのだが,話しているうちにだんだんエスカレートしてきて「あいつがムカつく」とか「こいつはアホだ」という話になり,最終的には「課長がバカ」,「部長がアホ」という結論に達し,最後は必ず「みんなバカばっかりだ」というふうになって終わる.

中間管理職(40〜50代)であれば,最初のうちは「いまどきの若い者は……」とか「人にものを教えるのは難しい」とか「君の周りに優秀な人間はいないか?」という話ではじまり,それに対して私がああだこうだといっていると,だんだん「君の仕事はうまくいっているのか?」とか「これからどうするんだ?」という話になって,最後は必ず「恋人は?」「結婚はどうするんだ?」となるのが通例だ(私のことを心配していってくれているのだろうが,これもある意味愚痴なのかもしれない).

たいてい愚痴というのは相手が「うんうん」といって聞いてくれればそれだけでいいのであって,自分が不満に思っていることに対して誰でもいいから同意を得れば気が晴れるし,それで満足なのであるな.

私も「それで気が晴れるのならいくらでも聞きましょう」というスタンスでいるので,それくらいで気がすむのなら別にお安い御用だ。念のために私(の気持ち)に余裕があるというのを確認してからいってもらえばいつでもOKである(愚痴を聞いてもらうのだからそれくらいの気遣いは必要だろう).

問題は会うたびに愚痴をいってくる人間である.こいつは厄介だ.

私だって1回や2回なら黙って聞くが,会うたびに一方的に愚痴を聞かされるのではたまったものではない.

仏の顔も三度までというが,3回以上も愚痴を聞かされているとさすがの私も黙って聞いてはいられなくなる.

そうなると私の性格上,原因を究明しないと気がすまなくなるのであるな.向こうがひとしきり話して一息つくとすかさず

「なんでそうなるんですか?」

「なんでその人はそんなことをいうんですか?」

「ボクだったらこういうふうにしますけど」

「相手にそんなこといわせなければいいんじゃないですか?」

……などなど.

逆にこちらから質問攻めにしてしまうので,向こうも愚痴をいっているどころではなくなってしまうのだ.

だいたい会うたびに同じような愚痴を同じようにいっている人間というのはこちらからの質問にはたいてい「知らない」「わからない」「知りたくもない」という答えばかりなのだが,私がどんどん原因を突き詰めていくとじょじょに自分に非がある,もしくは自分の考えが甘かった,はたまたいくら愚痴をいってもなんにも変わらないという現実が目の前に迫ってくる.

そうなるとこちらとしては「やれやれ,これで今後はこいつの愚痴からは開放されるだろう」と思うのだが,そうは問屋が卸さない.

相手は自分の旗色が悪くなると決まってこのセリフを吐くのである.

「totsugeki君と私は違う人間だ」

たいてい自分に非があるのを認めてしまった人間はこのセリフを使う.おまけに

「totsugeki君には自信があるだろうけど私には自信がない」

とかいっちゃったりする.

……それは自慢ですか?

というか,別にあなたの愚痴を聞かせてくださいなんて一言もいっていないのに黙って聞いてくれないと逆ギレ?

そいでもって,お前と私は違う人間だって?

……別にたいしてかわらないと思うけどさ。私だって愚痴はいうし,不満,不平だってみんなと同じように感じるし口にする.ただ,それを誰彼のべつまくなしまくし立てたりはしないようにしているが,それ以外はたいしてかわりはない.

愚痴を黙って聞いてくれる人がいる人は幸せなのかもしれないが,いくら相手が黙って聞いてくれるからといってそれに甘えてただ愚痴をいっているだけでは,いっているほうの気はすむかもしれないが,いくら熱弁をふるったとてなんの解決にもならないではないか.

それに相手があなたの愚痴を「うんうん」と親身になって相づちを打って聞いてくれているからといって,相手が本当にあなたのことを考えて頷いているとはかぎらないと思うのだが,まあそれは言及しとかんとこう.

まあ,たまには黙って愚痴を聞いてもらいたいときもあるだろうから黙って聞いてくれる人に愚痴をいうのもいいとは思うが,まかりまちがって私の機嫌の悪いときに愚痴をいったりすると、いってしまったことを後悔するはめになりますですよ.

だいたい愚痴なんていうのはいくら会社に非があろうが,上司が死ぬほどイヤなやつであろうが,とてつもなく待遇が悪かろうが,この一言で終わってしまうのである.

「……じゃあ,会社辞めれば?」