[ちょっといいもの]センスのよい人間


センスのよい人間というのは、聞いてくる質問のクオリティが違うのである。


新人「totsugekiさん、ちょっといいですか?」

私「へ?」

新人「このデータなんですけど、版面の右と左のアキの長さが違うのはなにか意味があるんですか?」

私「ああこれはねえ、製本したときに綴じられる部分を計算してあってさあ、わざと左右のアキの長さをずらしてあるんだよね」

新人「あ、そうなんですか〜」

私「ノンブルも紙面の中央にきてないでしょう?」

新人「あ、そうなんですよ、それが気になったものですから……」

こんなことは組版の常識といえば常識なのだが、未経験の人間がそんなところに気がつくというのはやはりセンスがよいというか優秀な人間は目のつけどころが違うのだなあと感心しきり。

たとえ長年DTPオペレータをしていたとしても、このことに気がつかない人間は一生気がつかないと思うが、気がついてしまう人間はすぐにでも気がついてしまうという事実をみるにつけ、センスのある人間とセンスのない人間との差というのは絶望的なまでに開いているのだなあということをまざまざと実感したりする。

だって、私なんかそのことに気がついたのはつい最近だもの。未経験で入社した彼女に抜かされる日も近いのか……。

な〜んて思ったりもするが、まあそれはそれでいいことなので応援してあげることにする。そういう人間が身近にいると自分も嬉しいものだ(決して、勝負をしたら負けてしまうからではない)。

でもひとつ言い訳をさせてもらうと、一番最初にとにかく「紙面のど真ん中に左右対称に版面を入れておけ!!」って教わったものだから、ひたすら教わったとおり忠実に版面設計をしていたのである。なんとかのひとつ覚えとはまさにこのことであるな。

ちなみに版面を左右対称にしておくとページが動いたときに上に乗っているオブジェクトがずれないというメリットがあるのだが(QuarkXPressでは基本的に表組などのオブジェクトはページの上に乗っている状態だ)、逆にいえばそれだけである。

いうなれば版面を左右対称にさえしておけばとっても「無難」なので、みんなそうするってだけの話なんである。

しかし、ちょっと組版をかじったことのある人間に版面を左右非対称にしてくれというとすぐに「組版しにくい」とか「オブジェクトがずれる」とかいうネガティブな返答しか返ってこないが、版面を左右非対称にすることのメリットとデメリットを理解して選択すればなんの問題もないし、綴じられる部分を計算して版面設計をすることこそプロの仕事だと思うのだが、そういう考え方しかできないのもセンスがない人間特有の思考なのかもしれない。

ま、センスのよい人間であればそんなことに惑わされることなく「仕上がりが美しい」からという理由で左右非対称を躊躇なく選択すると思うが、いままで「組版が大変になる」からという理由で左右非対称を選ばなかった私って一体……。

はやくセンスのある人間になりた〜い*1

*1:注:扇子は間に合っているのでいりません