なかよし会社ごっこ


私がいま勤めている会社は「社員は絶対にクビにしない」という方針なんである。ことあるごとに、社長自らが「私は絶対に社員はクビにしない」というのを聞くにつけ、入社当時はなんてありがたい会社なんだろうと思ったものだ。

ただ、あまりにも口に出していうものだから、最近では「へぇへぇ、すばらしいこって」くらいにしか思っていなかったのだが、「社員を絶対にクビにしない」ということが会社にとってどういうことなのか、私自身まったく気がついておらず、それが意味することについ先日やっと気がついたのである。

私は「社員は絶対にクビにしない」というのは、辞めたい人間はいつでも辞めてもいいのだなというくらいの意味で受け取っていたのだが、それはある意味まともな人間*1が考える思考である。

では、まともではない人間が「社員は絶対にクビにしない」という言葉をどうやってとらえるかというと、「自分たちはなにをしても絶対にクビにならない」というふうに受け取るらしいのだな。直接そういうふうにいっているのを聞いたわけではないのだが、どうみても問題のある人間や問題を起こした人間が処罰を受けたり、排除されたりしない現状をみるにつけ、結果的にそうなっているということはやつらもそう思っているに違いない。

だから一生懸命仕事をしていようが、まったく仕事をしていなかろうが、仕事中にぐっすり眠っていようが、客先に出入り禁止になろうが、重大なミスを犯して取引を打ち切られようが、社長のご機嫌をとるためにせっせと金魚鉢を洗っていようが、社内で傷害事件を起こそうが、なんにも変わりはないのである。

むろん社員がなにか問題を起こすと社長室に呼ばれて社長と幹部にあれこれと事情を聞かれるらしいが、次の日には何事もなかったかのように普通に出社し、いつもと同じように過ごし、会社からは説明も報告も一切なし。別に社員に事故の顛末や報告をいちいちする義務も必要もないのかもしれないが、重大な問題が起こったのであれば、朝礼でつまらない話をしていないで今後こういうことが起きないように全社的に対応をするべきなのではないかと思ったりもする。

まあ、そういった人間は責任を取って会社を辞めるとかそんな殊勝なことは端から思いもしないのだろうから、自分から辞めるとさえいわなければどんなに重大なミスを犯しても処罰されたり、クビにならない。ということはプレッシャーもないだろうし、会社に来るのも楽しいのだろう。

私はプレッシャーを感じずに仕事をするなんて絶対に楽しくないと思うのだが、プレッシャーがないということは逆にいうとなんでもありというなのだな。もし社員が犯罪を犯したとしても「会社の評判が落ちる」とかいうくだらない理由で、社内でさえあればなにも咎められないのだ。

そうなるとモラルもヘッタクレもない。これではまるでマッドマックスの世界だ。

いやはや。

………しかし、これを書いていてひとつだけわかったことがある。

なんでこの会社にはろくに仕事もせずに社長のご機嫌を伺うやつばかりいるのか。

答えは簡単である。社長がそうしているからだ。

つまり仕事なんかしていなくても社長のご機嫌さえ伺っていれば金がもらえる。ということはそれが仕事なんであるな。で、社長は社員にちやほやされて「おお、自分はなんて人気者なんだ」と喜んでいるわけだ。

………いやあ、なんていい会社なんだ。こんなところに入社できて私は幸せ者なのかもしれない。

ぼかぁしあわせだなあ〜〜。

*1:自分でいうのもなんだが