会社でできることは自宅ではしない

「今日できることは明日にしない」という言葉がある。

いい言葉だ。

私は作業の効率を高めるという点から、この言葉はまさにそのとおりだと思い、これまで実践してきた(つもり)。

とにかく作業の効率を高め、卒をなくし、質を高める努力をしてきた。そうすることによりムダな経費をなくし、相対的に売上が上がるようにしたのだ(私が前に勤めていた会社は全部で10人ほどの小さな編集プロダクションだった。いま考えるとすごい健気)。

ただ、「今日できることは明日にしない」というのを、残業してまで実践するとただの自己満足になってしまうので(企業的にはマイナスである)、寝ても覚めてもどうやったら作業が効率化できるのかばかりを考えていた。

そうしないと前の会社ではDTPをやっている人間が自分しかいなかったので仕事が終わらなかったし、正直なところ残業をしたくなくて必死だったのだ(毎日終電で帰るのはさすがに疲れる……)。

そのおかげで、とにかく効率よく作業をするテクニックが身につき、なによりも最初に段取りを考えるくせがついた。そうしてやっと自分の力が発揮できると思ったら、会社が縮小になってしまい、社員は全員解雇。

本当ならここでがっくりするのかも知れないが、私の場合まだ若かったので「仕事も覚えちゃったし、次に行けばいいや」とあっさりと気持ちを切り替え、就職活動に勤しむ。が、それから半年間もの紆余曲折を経て、いまの印刷所にやっとこ就職(身から出たサビなんだけども、生活費が底をついてしまって本当にピンチだったので給料さえもらえればどこでもよかった)。

それでも半年間のブランクがあったぶん「さあ、一生懸命仕事するぞ〜〜〜」と「今日できることは明日にしない」をモットーに、張り切って仕事をこなした。最初こそ調子が出なかったが、調子が出始めるとそのうちに大量ページや難しい組版を任されるようになり、そのうちに他のオペレータの1.5倍は作業をするようになった。最初は「入ったばかりだし、しょうがないかな」と思っていたのだが、そのうちどんどんエスカレートしていき、次から次へと仕事を回されるようになり、どう低く見積もっても2倍は仕事をするようになった。

「……おいおい、なんかおかしくないか?」と、思っているうちに周りのオペレータが一人辞め、二人辞めていく。

なるほど。仕事ができてもできなくてもこの会社はなにも変わらないのだ。だから仕事ができる人間ばかりがどんどん辞めていって、仕事ができない人間ばかりが残るわけだ。

別にこんなところいつ辞めてもいいけど、それじゃハラの虫が治まらん。

そこで、とても腹黒でポジティブシンキングの私は「今日できることは明日にしない」から「会社でできることは自宅ではしない」に180度方向転換。

だもんで、本日は朝から仕事もせずにHolon Linux3.0豪華をMacintosh G3 DTにインストール。

いえ〜い!! 今日はなかなかいい仕事したぜ!!