そして作り直し


なんだかんだで結局、一部の辞書を作り直して配布するということに決定したのでありますが、作業をするのはミスをした本人ではなく、なぜか私たちであります。

なもんで、なにか納得がいかないまま、急ピッチで作業にとりかかっていたのでありますが、そのとき一本の電話がかかってきたのであります。

そしてその電話に出た社長が、



 「ああ、はい。おつかれさま」



としゃべっているのを聞いて、取引先のソフトウェア会社に打ち合わせに行っている営業からの電話だというのは容易に予測がつきました。



 「うんうん。あ、そう、わかった」



などといって社長が電話を切ったのでありますが、どんな内容の話をしたのかまでは推測できません。

すると、開口一番



 「いまの作業はストップしていいから」

 「へ?」

 「いま、S藤さんからの電話だったんだけど、取引先との打ち合わせで期間をおいて全部作り直すことに決まったから」

 「……」



昨日は「よそはよそ、うちはうち」なんていっていたのに、あの社内での大事な話し合いとやらの意味はなんだったのかと思いつつ、作業を止めたのでありますが、なんだかこの会社に来てから、わけのわからないことばかりであります。