[コジロー]去勢手術をする


コジローはコタローに比べるとそれほどやんちゃではなかったのと,生後2年が経ってもスプレーをする様子がなかったので,去勢手術は受けさせていなかったのである.

実はコタローは私が産まれてはじめて一緒に暮らすことになった猫(というか私はそれまで動物と一緒に暮らした経験がなかったのだ)なのでわからないことばかりで,webや本をいろいろと読みあさった結果,どこを読んでも必ず


 オス猫はスプレーをする前に去勢をしましょう


と書いてあったので,


 そうか,スプレーをされる前に去勢をしないとまずいんだな


とマニュアルどおりというか,なかば脅迫的に去勢手術を受けさせたのである.

そうしたらたしかにそれまでされたいたずらもされなくなり,やんちゃな性格が直り,とても飼いやすくなったが,その反動(?)でとても臆病な性格の猫になってしまったのである.

なもんで,


 ああ,よく考えたらスプレーをしない可能性もあったし,こんなことならもうちょっと様子をみればよかった


とコタローには悪いことをしてしまったなと自分の余裕のなさを痛感したのである.

……まあ最初の子どもというか,はじめての子ども(長男や長女)というのはたいていそんなもんだと思うのだが,そんな理由もあり,コジローはスプレーをはじめるまでは様子をみて,もしスプレーをはじめたら去勢手術を受けさせようとのんびりと構えていたのである.

そうしたら先日,両国のY木氏の引っ越しの手伝いに行って,その際にいろいろと不要品を引き取ってきたのだが,その荷物にY木氏の家で可愛がられているシエスタ(メス:4歳)のニオイというかフェロモンがしみついていたらしく,それに触発されて急激にスプレーをはじめてしまったのである.

しかもいままでスプレーをしなかった反動か,私の対応にちょっとでも気にくわないことがあると手当たりしだいにスプレーをされてしまい,部屋中ものすごいニオイになってしまったのである.

おもしろいことに基本的にスプレーというのは私に対するアピールであり,私のみえる範囲というか,私がいないときにはスプレーはしていなかったようなので,私が自宅にいなければ少しは被害も少なかったのかもしれないが,運悪く私が毎日自宅にいたために被害が大きく,そのニオイたるや少しもおもしろくない結果になってしまったのである.

といっても,3日くらい立て続けにカーテンやら壁やらテレビやらにスプレーをされたおかげで,私自身はそのニオイにも慣れてしまい,別段気にはならなくなってきてはいたのだが(おいおい),部屋にかけていた上着やテニスウェアにそのニオイが移ってしまい,スクールに行ってロッカールームで着替えをしていると


 ……なにかにおうなあ


と思っていたら,なんてことはないニオイのもとは自分だったことに気づき,これはまずいと行きつけの動物病院に手術の予約をしたのである.だが,あいにく予約が一杯とのことで2週間待ちで本日めでたく手術を受ける段取りとあいなったのである.

しかし,コジローがスプレーをはじめたこの2週間というもの毎日が闘いの連続で,日々コジローのご機嫌をうかがい,ニャアといわれるとすぐににぼしを差しだし,食事にも粗相がないように気を遣い,ご機嫌を損ねないようになるべく自宅にいないようにしていたのだが,いまとなってはそれも懐かしい思い出−−手術が無事に終われば−−になるはず.

コタローの去勢手術のときには自分が手術を受けるときのように緊張をしたものだが,今回はさして心配や緊張もせず,テニススクールに行く前にコジローを
預け,スクールから帰ってきたら先生から


 「コジローちゃん,もういいですよ」


という連絡があったのですぐに引き取りに行き,あんなに大騒ぎをしたのもどこへやら,すべて先生にお任せでさくっと終わってしまったのであった.

こんなことなら早めに手術を受けさせておけばよかったと思いつつも,その反面本当なら飼い猫にこんな痛い思いをさせたくはないとも思うのだが(手術直後の跡というのはものすごく痛々しい),去勢手術をすることによって罹患するリスクが減り一般的に長生きをするようになるので,一概にどちらがいいとはいい切れないのだが,本猫たちにとってどちらが幸せなのかは私にはわからない.

でもこのニオイじゃ部屋に人は呼べないし,まあ仕方ないかと納得するようにしたのだが,最後に残ったのは30,000円の手術費用ということだけであった…….