[会社]新入社員のH部さんは実は私よりも年上だったらしい


個人的には


 「ええ〜〜!? そうな〜ん!?」


といった感じなのだが、ある意味ノブレス・オブリージュよりもびっくりである。

なんで彼女が自分よりも年上だということがわかったかというと、実は先週の金曜日(2005年11月18日)が月刊誌の下版前でE代とH部さんと私の3人(むろんドブチョーとバカチョーもいた)で22時近くまで残っていたのである。

で、帰りが「たまたま」彼女と一緒になったので、図らずも


 「H部さんは家は近いの?」

 H部「ええ私、新小岩です」

 「ふ〜ん。じゃあ、お酒は飲めるの?」

 H部「いや〜、私お酒は飲めないんですよ。食べるほう専門で」

 「ああ、そうなんだ。……じゃあ、なんか食べに行く?」

 H部「はっ、はい、喜んで!!」


という流れになったのだが、実は私はいままで彼女と一緒に帰るのをなるべく避けていたのである。

というのも、E代や彼女とは同じ月刊誌を担当しているので帰りの時間というのはほとんど同じなのだが、E代はタイムカードを押してさっさか帰るのに対して、なぜかH部さんは帰り際に必ず


 「totsugekiさんの帰り支度はまだかしら?」


といった感じでこちらをじーっとみながらタイムレコーダーの前でしばし佇んでいるのである。

それをみて、なにやら身の危険を感じた私はそれ以来、彼女とはなるべく帰り際に目を合わせないようにしていたのだが、今回は彼女がなぜか会社の玄関の扉の前で待ち伏せをしていたので(故意にかどうかはわからんが)、最寄りの駅まで一緒に歩くことになったのだが、あんまりにも彼女が私に聞きたいことがあってしょうがなさそうな顔をしていたので、食事に誘ってみたのである。


 「どこがいいかなあ? 酒が飲めないんだったら食べ物がおいしいところがいいよね?」

 H部「いやあ〜、私ババアなんでどこでも平気ですよ」

 「(ババア?)小綺麗で食事がおいしいところとか……」

 H部「いや、totsugekiさんがよく行くところでいいですよ」

 「あ、そう? でも、ボク基本的にお酒を飲むところしか知らないんだよね」

 H部「私、おばさんなんでどこでも大丈夫よ」

 「(おばさん? 大丈夫よ?)そう? 大丈夫かなあ? おっさんばっかりだよ」

 H部「ええ、平気、平気。それくらいがちょうどいいよ」


私が自分よりも年上の女性と酒を飲みに行ったりすると、向こうはなぜか自分が年上だというアピールをやけにしてくることがあるが、行く前からこの前振りってことは彼女はもしかして私よりも年上なのか? いや、少なくとも彼女がそう思っているだけで実際に年齢を確認してみないとわからんよなあ。でも、私に対する言葉遣いがやけに馴れ馴れしくなってきているのは気のせいではないような……。


 「いやいや、お疲れさま」

 H部「お疲れさまです」

 「どう? 仕事は?」

 H部「いやあ〜、大変よ」

 「まあ、下版前だから特に大変だよね」

 H部「いやあ、そっすねえ」

 「ま、焦らないでじっくりいけばいいと思うよ」

 H部「まあ、そうね。ぼちぼちいきます」

 「じゃあ、なんでも食べたいもの注文して」

 H部「あ、はい。……あ、あのね」

 「は?」

 H部「前からtotsugekiさんに聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいい?」

 「……はあ、どうぞ」

 H部「ええと、もしかしてtotsugekiさんって……」

 「はあ」

 H部「猫好きだよね?」

 「……え? なんで?」

 H部「だって、いつもwebで猫みているでしょう?」

 「ああ、まあね」

 H部「いつもかわいいな〜〜って思ってみてたんだけど、声かけたらまずいかな〜って」

 「……いや、別にそんなこともないよ。まあ、基本的に犬でも猫でもなんでも好きなんだけどね」

 H部「ああ、やっぱりそうだよね!! 私、絶対にそうだと思ったんだ〜〜!!」

 「……いやあ、自宅に猫が2匹いるからさ」

 H部「え? 2匹もいるの!! どんな猫ちゃん? 歳は? オス? メス? 種類は? 模様は?」

 「(……なんなんだ、これは?)」


そのあとも猫のことを根ほり葉ほり聞かれたのだけれども、色はどうだ? 柄はどうだ? ってしつこく聞かれたもんだから、iPodでコタローとコジローの画像をみせてあげたら、「かわいい〜〜!! かわいい〜〜!!」って大声あげて思わず卒倒しそうなくらい喜んでいたのである。

そしてねこねこいって喜んでいたと思ったら、今度は急に


 「なんでtotsugekiさんがこの月刊誌を担当していたんですか?」


なんて聞かれて、こんなところに来てまでなんだかなあと思いつつも、聞きたいのならまあいいかと思って、まじめに会社の話をしてあげたらやけに神妙な顔をしてふんふんと聞いておりました。

で、スタートが遅かったものだから話の途中で「もう閉店です」といって店を追い出されてしまったので、「じゃあ、コーヒーでも一杯飲んでいきますか」と肌寒いなかをうろうろと店を探したのだが、すでに喫茶店らしきところはどこも閉まってしまっている時間。


 「いやあ〜、自分お酒飲むところしかわからないから、喫茶店とかよくわからなくって。ごめん」

 H部「いやいや、いいよ。それよりもtotsugekiさんは家は近いの?」

 「うん? 電車に乗れば20分くらいかな」

 H部「ええ〜〜〜!? 近くていいね!!」

 「え? 新小岩だってそんなもんじゃん?」

 H部「いや、自分そこからバスなんで」

 「え? バスでどれくらいなの?」

 H部「え〜と、15分くらい」

 「え? じゃあ歩いたらどのくらいかかるの?」

 H部「……え〜と、1時間くらいかな」

 「ええ? だってそんな歩いたら違う駅についちゃうじゃん!?」

 H部「いやあ、自分の家の近くって畑とか田んぼとか金魚の養殖場とかトマト狩りができるところとか平気であるんよ」

 「ハハハハハ。そりゃ遠すぎるよ」

 H部「うん。だから引っ越ししたいんだけど、自分お金がないんよ」

 「あ、そうなの? だったらあの会社いいんじゃない。給料はまちがいなくくれるからね」


な〜んて会話をしていたら、またもや脈絡もなくいきなり


 H部「totsugekiさんって若いよね」

 「え? そうでもないと思うけど」

 H部「いや、少なくとも私よりは若いと思うよ」

 「そうかなあ。でも、ボクの歳知らないんでしょう?」

 H部「うん、それでもまちがいなく私よりは若いよ。私おばさんだもん」

 「ふ〜ん。でも仕事するのに歳は関係ないんじゃない?」

 H部「う〜ん、まあね」


う〜ん、E代もそうなのだけれども、なんで相手よりも相対的に歳を食っていると思っている女性は自分で自分のことを「おばさん、おばさん」といってしまうのだろうか?

まあ、もうすぐ60に手が届きそうだというのに「私はまだ若い」とか本気でいっているおばあさんよりはまだいいのかもしれないが、別にこちらから聞いたわけでもないし、自分からいったとて歳が若くなるわけでもないのになんでわざわざそういうことをいうのだろうか? それが女心ってものなのかな?

もしかしてあれか? 私がすっごい年下の女性になぜかはわからないけど酒を飲みに誘われて、


 「いや、自分おっさんだから一緒に酒飲みに行ってもおもしろくないと思うよ」


とかって答えるのと一緒なのかな?

え? 違う?

なんだかよくわからないけど、とりあえずH部さんは年上ということでこれからは敬語で受け答えをすることにしよう。