[かなりすごいもの]ミュシャ展

ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展 ―プラハからパリへ 華麗なるアール・ヌーヴォーの誕生
http://www.ntv.co.jp/mucha/index2.html


前々から行きたいとは思っていたのだが、延び延びになっていたのである。

「3月27日(日)で終わりかあ。となると、行くなら26日(土)しかないけど、最終日前だから混みそうだなあ」なんて思っていたら、こんな記述を発見。

20万人突破!お客様感謝キャンペーン!決定

 おかげさまで、3/23(水)に、1/27(木)の開幕以来、20万人目のお客様をお迎えすることができました。ご来場の皆様、本当に、ありがとうございます!!
 これを記念いたしまして、前回10万人達成キャンペーン時に好評頂きましたミュシャ展オリジナルリングノート(限定生産非売品)プレゼントキャンペーンを再度行わせて頂くことにいたしました。3月24日(木)〜25日(金)までの2日間に限り、当日先着300名様限定で、プレゼントいたします!


「おお! 限定生産非売品!! これは行かねばなるまい」

……でも、この前ずる休みしたばっかりだしなあ、どうしようかなあなどと考えているうちに出社時間が刻一刻と迫ってくる。

よし、とりあえず電車に乗ってから決めよう。

すばやくマシンを片づけ自宅を出て駅に向かい、きた電車に乗り込んだのだが、この電車に乗っていけば会社には間に合うけれども、表参道で銀座線に乗り換えれば上野には9時前には着くなあ、どうしようかな……。

でも、土曜日に行ってもめっさ混んでいるだろうし、芸術をじっくりと鑑賞するなら平日に限るよな。それも開館してすぐの午前中なら人も少ないはず。それに仕事もヒマだし、なんたって限定生産のうえに非売品だ。これはゲットしなければなるまい。

なもんで、ぶらり途中乗り換えの旅を決め込み、表参道で銀座線に乗り換えて上野駅に8時50分に到着。

しかし10分前に着いたのはよいのだけれど、上野なんて滅多に来ないし、出勤する人々でごった返していて、出口がよくわからん。さんざん迷ったあげくになんとか公園口出口にたどり着くと、どうみてもこれから出勤するとは思えない人々が信号待ちをしている。

「……おいおい、もしかして君たちミュシャ展に行くんじゃないよね?」

私は妙な不安を感じつつ信号待ちをしていたのだが、信号が変わると一斉に雑多な一団は公園に向かって歩き始めたのだが、どうみても一点を目指して歩いているようにしかみえない。

「……おいおい、もしかして君たちオリジナルリングノートがほしいってわけじゃないよね?」

万が一先着300名に入れなかったら、せっかく会社をずる休みしてまで来たのにさびしいじゃないか。でも、よく考えたら私は東京都美術館なんて行ったことがないのに、あの雑多な一団はどうみても東京都美術館の位置を知っているかのようにまっすぐ目的地に向かっている(ようにみえる)。これはどう考えても不利だ。

「ちくしょう、東京都美術館はどっちだ?」

そんな焦りが私を小走りで東京都美術館に向かわせ、最後はほぼ全力疾走であった。のんびりと美術館に向かうまわりの人たちには、私は待ち合わせに遅れて焦っていたか、もしくはよっぽど熱心なミュシャファンだと思われたに違いない。

「……ああ、疲れた」

美術館に駆け込んだ私はそう呟かずにはいられなかったが、まだ目的を達成していない。ハアハアと息を弾ませながらすばやくチケット売り場に並び、1,300円を払って入場券をゲット。

「よし、もう少しだ」

しかし、チケット売り場からミュシャ展が開かれているスペースまでまだ距離があるようで、ぞろぞろと人が歩いている。

「なんなんだ、これは? さてはおいらにオリジナルリングノートをよこさないつもりだな」

と一人ごちながら、やはり小走りで入り口で機械的にチケットをもいでいるお姉さんに入場券をつきつけ、半券を受け取ると同時に、カウンターに100冊ほど積まれていた限定生産非売品のうちの1冊をもらい、心の中で「やった!! なんとかゲット」とガッツポーズ。

しかし、こんなに苦労して手にした限定生産非売品をまじまじとみてみると、思っていたよりもしょぼかった。

「……ああ、今日の仕事はもう終わったよ」

あんまりにも疲れてしまったのでそのまま帰っちゃおうかとも思ったが、せっかく(!?)なので気を取り直して芸術をじっくりと鑑賞することにする。

だが、会場に一歩踏み込むと会場内は異様な人混みでごった返していた。

「……あんたら、ヒマなの?」

あとでわかったことだが、入り口を入ってすぐはミュシャが描いた作品でも有名なものが展示されていたので、人がたむろしていたのだ。

せっかくのんびりと鑑賞できると思ったのに、あまりの人混みにちらりとも作品がみえない。仕方がないので私はごった返している地下1階を足早に通り抜けて1階へと上がった。するとそれほど名の知れた作品は展示されていないようで、そのせいかはわからないが、地下1階よりは人がまばらでじっくりと作品を鑑賞することができた。

やっぱりこんな時間に美術館に来るような人たち*1でも、やはりわかりやすいものに飛びつくのだな。

「いやあ、平日の午前中はこうでなくてはいけませんのう」

おかげでじっくりと鑑賞できたのだが、会場内が薄暗いうえにあまりにも目を凝らしてみたものだから、寝不足もあって途中から目が痛くなってきた。やはり一朝一夕には芸術は身に付かないのだな(なんだかなあ)。

しかし、実際に書かれたものを間近にみられるというのは本当にすばらしい体験であった。カタログなどで何度も目にしたことのあるミュシャの作品のオリジナルが目の前にしかも原寸で存在しているのである。

それを見に行っているのだからそんなことは当たり前のことなんだけども、そんなことにも感動するくらい、すべてがすばらしかった。

私は自慢ではないが芸術に疎い人間なので、実際に作品をみてきたとはいえ、ミュシャを語れないし、語る気もさらさらないので、とにかくすばらしかったとだけ書いておく。

そして目の痛みと戦いながら、2時間ほどかけて作品を堪能し、帰りしな土産コーナーでカタログをゲット。パラパラとなかをみると展示されていた作品が解説つきで掲載されているのだが、オリジナルをみたあとでは途端に迫力がなくなってしまうなあ。

私は満足して美術館を出ると目をシパシパさせながら、なに食わぬ顔で会社に向かったのであった。


*1:こんな時間に来るということは目も肥えているのだろうと思うが