なんちゃってDTPオペレータ
Mac DTPではQuarkXPress(組版)、Illustrator(ドロー)、のPhotoshop(ペイント)の3つのソフトを指して三種の神器と呼ぶ*1(やけに仰々しい呼び方である)。
「三種の神器」などと大層ないいようだが、逆にいえばこれら三種類のソフトを使えればMac DTPはできるということである。そうなると「なんだDTPなんて楽なものではないか」と思われる方もいるだろう。
なにせ毎日毎日、この三種類のソフトしか使わないのだから最低限作業に必要な操作が覚えられないという人間のほうが珍しい。それにDTP業界というのはMacintoshがスタンダードになっているので、MacでDTPを始めるというのは、Windows DTPに比べれば比較的簡単なのである。
ただ「Mac DTPが楽」というのは、【Mac DTP】という言葉の【Mac】の部分では三種類のソフトしか使わないから操作自体は覚えてしまえば簡単ですよというほどの意味であって、残りの【DTP】の部分になると話は別だ。特に【DTP】の【P】の部分はかなり難しい。
実際に自宅でMacを使って自分のホームページを作っているとか、またはペイントソフトやドローソフトをちょっとかじった人間であれば、Quarkは別にしてもIllustratorやPhotoshopでの作業はさほど難しくない。キーボードから文字が入力ができて、Illustratorで線と◯と△が書けて、Photoshopで画像のトリミングができれば、もう立派なDTPオペレータなんである。
ではDTPはなにが難しいのか?
一番難しいのは組版なんである。いくらソフトの操作ができたとしても組版の知識がないとDTPはできない。だからといって前職は編集社で10年編集をやっていましたという人間がすばらしい組版ができるのかというとこれまた別の話であって、編集を10年もやっていると年齢もそれなりだろうし、年齢がそれなりということはたいてい頭も固くなってしまっているので、ソフトの操作で挫折してしまうことが多い(注:むろんこれは私の経験上の話であって、そうでない人もたくさんいるとは思う。それに編集を知っている人間が組版を覚えるとすばらしい組版ができる可能性は高い)。
つまりは組版の知識とソフトの操作のどちらが欠けてもDTPはできないのである。ただ、「できない」ということは「不可能」ということではないので、ソフトの操作は知っているが、組版の基礎を知らずになんとなく組版っぽいことをしているなんちゃってDTPオペレータは星の数ほどいるのだ。昨今、組版のレベルの低下が叫ばれて久しいが、なんちゃってDTPオペレータの責任はかなり重いはず。
ただ、この現象は別になんちゃってDTPオペレータだけに責任があるわけではない。組版の基礎知識をちゃんと教育をしない会社もいけんのであるが。
とはいえ「ただ毎日いわれたことをやってればいいや」となにも考えずに日々ボケーっと過ごしているオペレータが多いのも事実なので、どっちもどっちなのだが、結果として適当な組版が巷に氾濫しているのは嘆かわしいことである。
もうちょっと書きたいところなのだが、長くなりそうなのでこの続きはまた明日以降に続く。