木を見て森を見ず
本日、以前からの懸案であった社内サーバ導入についての資料というか提案をまとめて、週明けの定例ミーティング(つっても、やったりやんなかったりするんだけど)で配布したのであります。
「……え〜、ざっと説明をさせていただきましたが、みなさまにはお手数をおかけすることになると思いますけれども、ご協力をお願いいたします。つきましては社内で使用しているライセンス数を把握したいので、いまお手元のマシンでお使いのファイルメーカーのバージョンをすべて教えてください」
「えーっと、これはtotsugekiさんにどうやってお知らせすればいいですか?」
「あ、そうですね。メールもしくはメモかなんかに書いて私にいただけますか」
「わかりました」
「え〜、あの〜……」
「はい、なんでしょう」
「え〜と、さきほどおたずねのファイルメーカーのバージョンの件なんですけども……」
「はい」
「えーと、実は社内のファイルサーバで使用しているファイルメーカーの顧客管理ファイルの作成バージョンが5.5なんですね」
「はい」
「それでいまそのファイルにアクセスするのに古いバージョンのファイルメーカーを使用しておりまして……」
「はい」
「それが5.5なんですよ」
「はい、それがなにか?」
「で、さきほど社内にサーバを立ち上げてそこで顧客管理ファイルを共有するとかっておっしゃってましたよね……?」
「ええ、おっしゃってましたねえ」
「totsugekiさんはご存じないかもしれませんけど、古いバージョンのファイルメーカーのファイルを新しいバージョンで開くとレイアウトがくずれたり、不具合が出たりするんですね」
「ああ、そうですね」(それくらい私も知っている)
「で、いま使っている顧客管理ファイルを社内サーバに移すということはファイルメーカーのバージョンが変わるということですよね?」
「んー、そうですねえ。そうなる可能性もありますねえ」
「そうなるとさきほども申し上げたとおり、顧客管理ファイルのレイアウトがくずれたり、不具合が出たりするってことですよね?」
「んー、運用の形態にもよりますが、一概にそうとはいえないと思いますけど」
「でも、古いバージョンのファイルメーカーのファイルを新しいバージョンで開くと確実にレイアウトがくずれるんですよ!!」
「ああ、そうなんですか」(だから、それくらいおいらも知ってるつーの!)
「この顧客管理ファイルは外注のプログラマの方に作ってもらったものなので、こちらでは構造とかあまりよく把握していないんです。だから、作り直すということもできないんです!!」
「ああ、そうなんですか」(把握してないってなんでえばってんの?)
「それをサーバで共有するなんてどうやってやるつもりなんですか!? ファイルが壊れて使えなくなったらどうするつもりなんですか!?」
「ええと、ですからまずはサーバを立ち上げてみて、次に業務で使えるのかどうかを段階を踏んで検証をしてみようと提案を……」
「この顧客管理ファイルは社内で使用しやすいようにカスタマイズされているから共有は難しいんです!! おまけにみんなが使っているファイルメーカーのバージョンを調べるなんてどういうつもりなんですか!?」
「ええとですね、いまみなさんにファイルメーカーのバージョンをおうかがいしているのはまずは社内で使用しているライセンス数を把握して……」
「みんなで共有できるようにするのは結構ですけど、業務で使い物にならなかったらどうするつもりなんです!?」
「ええとですね、ですから……」
と、ここで社長が「まあまあ」と間に割って入ってきて、私がミーティングの冒頭でした話を再度噛んで含めるように説明してくれ、先方が納得したのかはわかりませんが、なんとか話は終了し、ファイルメーカーのバージョンを教えてもらえることになったのでありました。
「え〜、ファイルメーカーのバージョンはどうやってお知らせすればいいですか?」
「あ、メールかメモでお願いします」
「はい、わかりました。では、いま申し上げますね」
「え?」
「え〜、ここのPCにインストールされているバージョンは5.5と……」
「……」
「……です」
「……」
「これでよろしいですか?」
「……ええ。はい。けっこうです。ありがとうございました」
優秀な方の相手はとても疲れます……。